【第60回 気象予報士試験 実技1】問2を徹底解説|500hPaトラフ・低気圧発達・前線解析・気圧の谷
こんにちは!今回は第60回 気象予報士試験 実技1 問2を解説します!
今回の問2では、
- 500hPaトラフA・Bの位置
- 上空トラフと地上低気圧の発達関係
- 閉塞前線の作図
- 700hPa鉛直流と850hPa気温分布
- 地上の気圧の谷と風の収束
- 対流不安定と対流雲の発達
など、温帯低気圧と冬型場の解析で非常に重要な内容が問われています。
特に、 地上低気圧がどの上空トラフの前面で発達しているか を時間順に整理することがポイントです。
実技試験記述5型
基本セット:どこで(場所・高さ・時刻)+ なぜ(原因・背景場)+ 何が起きている(現象)
- 分布型:「A側では○○であり、一方B側では△△となっている。」
- 時間変化型:「◯時にはAであったが、△時にはBとなり、AからBへと変化した。」
- メカニズム型:「〜ため、□□が強まり、その結果△△となる。」
- リスク型:「〜ため、◯◯のおそれがあり、△△への注意・警戒が必要である。」
- 構造型:「◯◯付近の◇◇hPaで気温減率が小さい安定層の上端となっており、ここが前線面に対応する。」
記述式問題の考え方はこちらの記事も参考にしてください!
⇒ 【実技試験講義No.1】気象予報士試験実技試験記述5型 – 独学資格塾
■ 問2(1) 500hPaトラフA・Bの位置
問題の要点
500hPa高度・渦度予想図から、12時間後のトラフA・Bの位置を読み取り、5160m等高度線と交わる経度を答える問題です。
模範解答
トラフA:東経 145°(144°も可)
トラフB:東経 149°(150°も可)
◇ 解説
この図で確認するポイント
- 5160m等高度線
- 等高度線が谷状に曲がる位置
- 正渦度極大域
- 初期時刻から12時間後への東進
トラフとは、上空の気圧の谷です。
500hPa天気図では、
- 等高度線が南へ谷状に垂れ下がる部分
- 正渦度が大きい部分
- 風向が変化する部分
を手がかりにして位置を判断します。
今回の問題では、トラフA・Bが12時間後にどこへ進むかを読み取り、5160m等高度線と交わる経度を答えます。
図を確認すると、
トラフAは東経145°付近
にあります。
また、
トラフBは東経149°付近
にあります。
つまずきポイント
トラフは「低気圧の中心」ではありません。
500hPaの等高度線の曲がり方と正渦度極大域を合わせて判断しましょう。
■ 問2(1)まとめ
- トラフAは東経145°付近
- トラフBは東経149°付近
- 5160m等高度線との交点を読む
- 渦度極大域と等高度線の谷をセットで確認する
■ 問2(2) 低気圧とトラフA・Bの関係、前線解析
問題の要点
三陸沖の2つの低気圧が1つにまとまり、その後発達する過程を、500hPaトラフA・Bとの位置関係から説明する問題です。
模範解答
①
トラフA:方向 北東、距離 500km(400kmも可)
トラフB:方向 同位置、距離 0km
②
2つの低気圧は、初めの12時間はトラフBの進行方向前面で発達し、1つにまとまり、その後の12時間はトラフAの進行方向前面で発達する。
③
◇ 解説
① トラフA・Bと地上低気圧の位置関係
12時間後、三陸沖にあった2つの低気圧は1つにまとまり、北海道付近の低気圧として解析されます。
この低気圧と500hPaトラフA・Bの位置関係を確認します。
トラフAは、地上低気圧から見ると
北東方向に約500km
の位置にあります。
一方、トラフBは地上低気圧とほぼ重なっており、
同位置・距離0km
と判断できます。
方向の読み取りに注意
この問題は「トラフから見た低気圧の方向」を答える形式です。
低気圧から見たトラフの方向と逆にしないよう注意しましょう。
② 発達過程の説明
温帯低気圧は、一般に500hPaトラフの進行方向前面で発達しやすくなります。
今回のケースでは、発達を支えるトラフが時間とともに変化します。
まず初めの12時間では、三陸沖の2つの低気圧が
トラフBの進行方向前面
で発達し、1つにまとまります。
その後の12時間では、トラフBの影響が弱まり、トラフAが低気圧へ接近します。
そのため、低気圧は
トラフAの進行方向前面
でさらに発達します。
記述式解答のポイント:時間変化型
どこで・いつ:初めの12時間はトラフB前面、その後の12時間はトラフA前面で
なぜ:上空トラフ前面では正渦度移流により上昇流が強まりやすいため
何が起きている:2つの低気圧が発達して1つにまとまり、その後も発達する
実技試験の鉄板
- トラフ前面 → 低気圧が発達しやすい
- トラフが接近 → 発達継続
- トラフが重なる → 発達のピーク
- トラフが追い越す → 衰弱へ向かいやすい
③ 前線解析
前線解析は、以下の順番で考えると整理しやすいです。
前線解析の基本手順
- 閉塞しているか判断する
- 850hPa等温線集中帯を確認する
- 風のシアーを確認する
- 上昇流域を確認する
- 閉塞点と閉塞前線の型を決める
- 最後に地上風を見ながら作図する
前線解析の考え方はこちらの記事も参考にしてください!
⇒ 【講義】前線解析 – 独学資格塾
今回の低気圧では、強風軸が巻き込むようにのびています。
また、寒気の流入や暖気の突っ込みも見られるため、
閉塞している
と判断できます。
この図で確認するポイント
- 強風軸の巻き込み
- 寒気の流入
- 暖気の突っ込み
- 低気圧中心付近の閉塞構造
次に、前線位置は850hPa等温線集中帯の南縁や風のシアーを参考にします。
さらに、帯状にのびる上昇流域も、前線位置を決める重要な手がかりになります。
閉塞点は、前線の推定位置と強風軸が交わる付近に置きます。
今回は、寒冷前線後面の寒気がより低温で、温暖前線前面の寒気との温度差も大きくなっています。
そのため、閉塞前線は「人」の形になるように解析します。
■ 問2(2)まとめ
- 12時間後、トラフAから見た低気圧は北東約500km
- トラフBは地上低気圧と同位置
- 前半12時間はトラフB前面で発達
- 後半12時間はトラフA前面で発達
- 前線解析では閉塞判断が重要
■ 問2(3) 地上の気圧の谷と大気構造
問題の要点
12時間後に本州付近で予想される地上の気圧の谷について、700hPa鉛直流、850hPa気温、地上風、相当温位、湿数から大気構造を読み取る問題です。
模範解答
①
700hPa面の鉛直流分布の特徴:地上の気圧の谷に沿って帯状の上昇流域となる。
850hPa面の気温分布の特徴:地上の気圧の谷に沿って温度場の尾根となる。
②
地上の気圧の谷の北東側は北よりの風、南西側は西よりの風で相対的に強く、気圧の谷付近で風が収束する。
③ 北にある
④
㋐ 低
㋑ 対流不安定
㋒ b
㋓ 750
㋔ 800
㋕ 高
㋖ 上昇流(鉛直流)
㋗ 950
㋘ 対流
◇ 解説
① 700hPa鉛直流と850hPa気温分布
700hPa面では、地上の気圧の谷に沿って帯状の上昇流域が予想されています。
つまり、地上の低圧部に対応して、上空で空気が持ち上げられているということです。
また、850hPa面では、地上の気圧の谷に沿って温度場の尾根が見られます。
これは、暖気が北へ張り出している構造です。
記述式解答のポイント:分布型
どこで:地上の気圧の谷に沿って
何が起きている:700hPaでは帯状の上昇流域、850hPaでは温度場の尾根となっている
② 地上風の分布
地上の気圧の谷の周辺では、風が谷に向かって吹き込みます。
今回の地上風は、
- 北東側:北よりの風
- 南西側:西よりの風で相対的に強い
となっています。
このため、気圧の谷付近では、
風の収束
が起きます。
収束した空気は上昇しやすいため、降水雲の発達につながります。
超重要
気圧の谷では、
風の収束 → 上昇流 → 雲の発達
という流れで考えます。
③ 24時間後の気圧の谷の位置
12時間後と24時間後の予想位置を比較すると、東経135°付近では24時間後の気圧の谷の方が北側にあります。
したがって答えは、
北にある
です。
④ 相当温位・湿数・鉛直流から見た大気構造
地上の気圧の谷の上空では、680hPa付近より下層で相当温位が高度とともに低下しています。
これは、
対流不安定
を意味します。
つまり、
- 下層に高相当温位空気
- 上層に低相当温位空気
があり、対流が起きやすい状態です。
この大気成層が変化する高度は、湿数3℃以下の湿潤層の上端とも近くなっています。
そのため、気団変質を受けた気層上の層を示すものと考えられます。
対流不安定となる層の上端は、
- 北東側:750hPa付近
- 南西側:800hPa付近
であり、地上の気圧の谷の上空で最も高くなっています。
さらに、気圧の谷の上空では最大で-120hPa/hの上昇流が予想されています。
湿数3℃以下の湿潤層も950hPa付近から660hPa付近にかけて存在します。
これらを総合すると、
対流性の雲が発達する可能性が高い
と判断できます。
つまずきポイント
「相当温位が高度とともに低下」する状態は、
対流不安定
です。
相当温位の値そのものではなく、上下の変化に注目しましょう。
■ 問2 全体まとめ
- トラフAは東経145°、トラフBは東経149°付近
- 前半12時間はトラフB前面で低気圧が発達
- 後半12時間はトラフA前面で低気圧が発達
- 24時間後の低気圧は閉塞している
- 地上の気圧の谷に沿って上昇流域がある
- 850hPaでは温度場の尾根が見られる
- 気圧の谷付近では風が収束する
- 相当温位が高度とともに低下し、対流不安定となる
- 対流性の雲が発達する可能性が高い
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第60回 気象予報士試験 実技1 問2の解説でした!
訂正・ご意見などありましたら、ぜひコメントで教えてください!
皆で最高の独学環境を作っていきましょう!
